映画「大阪物語」ロケ地探訪 その1
はじめに
大阪物語
1999年公開の映画「大阪物語」。関西テレビ開局40周年記念事業として制作されたとの事で当時深夜テレビで頻繁に映画宣伝していて、それがきっかけで映画館まで観に行ったのですが、冒頭シーンから初主演の池脇千鶴の自然体で瑞々しい演技に衝撃を受けたのと、両親役の沢田研二と田中裕子が夫婦漫才師という設定もあって前半のちょっとコミカルな雰囲気や後半のロードムービー的な要素など、いわゆる娯楽大作ではないけれど非常に味わいのある魅力的な作品で、いつかどこかでもう一度観たいとずっと思っていた映画のひとつだったのが、2018年にDVDが発売されたと知り早速購入しました。
約20年ぶりに観た「大阪物語」、自分がその20年の間に自転車さんぽで大阪市内を徘徊するようになったのもあって、映画のロケシーンひとつひとつに「あ、ここはあの辺やな!」と何となくロケ現場が何処か判る場面が多くて、それがまたこの映画の違った面白さを感じ、それらをひとまとめにしてロケ地めぐりするのも面白いかも。という事でやってみました。
マップ
今回は場所が分散している事もあり、ルートマップは作成せずロケ地のポイントをプロットするに留めました。地図内の茶色ルートは作中で路線バスが走ったであろう推測ルートです。
ー立ち寄りスポットー
マップには書きませんが、それぞれのロケ地の近くの立ち寄りスポットなどをこのような四角囲いの形で簡単に紹介しようと思います。
画像引用
本ブログ記事は映画「大阪物語」ロケ地を映画本編映像から推測し特定するという趣旨で作成しています。そのため映画ロケ地である事を解説するのに必要な画像を映画「大阪物語」DVDよりキャプチャし引用させていただいてます。
東大阪市エリア
花園商店街
映画「大阪物語」DVDより
冒頭モノローグシーンでの商店街。映画が公開された当時東大阪に住んでいたので花園駅前の商店街に何度か行った事があったのですが、狭くてごちゃっとした雰囲気のアーケードが印象的な街でした。 たばこ屋の看板に注目!
現在(2021年11月)の同地点の様子。アーケードもなくなり当時の面影をさがすのが難しいくらい。再開発で商店街の駅前部分が消滅して駅との間にビルが建っています。これじゃ人の流れが寸断されてしまう。再開発は既存の街並みと共存出来るようにするべきだと思うのですけど、すごく悲しい現実を見せつけられた気分。
どの辺りから撮影されたかをさぐる手がかりがgoogleストリートビューの過去画像に残っていました。googleストリートビューは過去に遡って画像を見る機能があり、下リンクは「8月2009」のものになります。
商店街入口左側に赤い庇のたばこ屋が見えます。これがキャプチャ画像で道の右側のたばこ屋と同一建物と思われます。ストリートビュー画面左上の「ストリートビュー・0月 0000」と書かれた部分をクリックして操作する事で過去の画像を見る事が出来、これを見ると「7月2020」までたばこ屋「1月2021」に飲食店に改装された事が確認できます。
映画「大阪物語」DVDより
同じく花園商店街、先ほどの位置よりも駅寄りの現在は存在しない部分と思われます。商店街は踏切を越えて南側までアーケードが続いていました。静止画キャプチャでは分からないけど動画でみるとこの場面でかすかに踏切警報音が聞こえ後ろの明るい部分で遮断器が下りていく様子が分かります。
現在は駅前再開発で「パザパはなぞの」というビルが建っています。
映画「大阪物語」DVDより
1枚目画像の暗い路地からカメラが左にパンして2枚目の画像になるカット。2枚目の画像をよく見るとたばこ屋の「こ」の字が写っています。
路地は和横丁という場所。
最初に貼った写真ですが、和横丁のすぐ左が花園ラグビー酒場でその隣が2020年頃までたばこ屋だった建物。
丸昇精肉店
花園商店街の肉屋さん。三叉路の角にあり若菜が弟たちを追いかけて奥のほうへ駆けていくシーンです。
映画「大阪物語」DVDより
奥のほうが少し土地が低くなっているのはこの商店街のある道が元々は川の堤防だった名残。
映画「大阪物語」DVDより
若菜の母親(田中裕子)がすき焼きの肉を買うシーン。なんと肉屋の店内からも撮影されています。
現在はアーケードもなくなり店舗が住宅になるなど、すっかり雰囲気が変わっています。
丸昇精肉店でコロッケを買いつつこの映画の事を話しかけてみました。20年以上昔の話だけど色々とお話しを聞けてよかった。コロッケが揚がったのでお金を払おうとしたら「いいからいいから、昔の事を思い出しながら食べて!」とサービスしていただきました。
いただいたコロッケ、花園ラグビー場前で美味しく食べました。今度このブログ書き上げたらお礼に行こう。
ー花園ラグビー場ー
商店街の道をそのまま進むとラグビーの聖地「花園ラグビー場」にたどり着きます。
花園ラグビー場の隣の運動場は土地が低くなっていて、大雨のときに雨水を引き込む遊水地になっています。
河内平野にはこのような遊水地が何か所かあり、ポタリングついでに見物するのも楽しいかも。
瓢箪山稲荷神社
映画「大阪物語」DVDより
映画のカメラ位置は舞台状の部分ですが普段は立入禁止のようなので舞台に上がる階段から撮影。
瓢箪山公園
線路沿いです。線路の架線を張る門型の架線柱が一つ置きに高いものと低いものが交互に立っているのは近鉄線の特徴で、この架線柱を見ただけで近鉄沿線だとわかります。
映画「大阪物語」DVDより
映画のカメラ位置は私有地で入れず低い位置からの撮影ですがこのあたりです。
ー瓢箪山駅前商店街ー
近鉄瓢箪山駅前にあるアーケード、踏切を挟んで北側が「サンロード瓢箪山」南側が「ジンジャモール瓢箪山」と呼びます。この商店街のある道は国道170号線に指定されていて、全国でも珍しい日中は車両通行禁止のアーケード国道です。といってもバイパス(外環状線)があるのでクルマはそっちを走れますが。
旧東高野街道でもあるのでいつか通しで走ってみたい。
吉田春日公園
映画「大阪物語」DVDより
学校の課外授業のシーン。校舎が映ってるので学校の運動場かと思ったけど実際は学校の隣にある広場でした。ちなみにあの校舎は英田中学校。主演・池脇千鶴の母校です。
島之内吉田住宅(跡地)
若菜の一家が暮らしていたという設定の公営住宅。映画前半でよく映ってますが現在は建て替えられて全く景観が変わってしまっています。
映画「大阪物語」DVDより
上の画像、奥の中央に変わった屋根の集合住宅、その手前に茶色っぽい屋根の3階建てぐらいの建物、右側にベージュ色の四角いマンションが見えます。
それらを手掛かりに見つけたのがこれ、変わった屋根の集合住宅、3階建ての建物、右にベージュ色のマンション。前述の映画画像の位置はこの写真位置より左後ろ方向だとわかります。
映画撮影位置付近と思われる場所。奥に5階建てぐらいの集合住宅が建った為に変わった屋根の建物は見えなくなってるけど右のベージュ色のマンションが確認できます。平屋の長屋形式だった住宅は2階建ての戸建てに建て替わっています。
映画「大阪物語」DVDより
兄弟で両親の漫才ネタを真似して披露するシーン。この公園も消滅しているらしく場所を特定するのに非常に苦労しました。画像の左奥に映っている建物がこれですね。
という事で現在は公営マンション群のある場所だと推定しました。
ー吉田川堤防跡ー
花園商店街がかつての堤防上の道だと話しましたが、かつてこの付近に吉田川という川が流れていたようで、近鉄けいはんな線吉田駅の近くに堤防跡が緑地帯として残っています。
住宅地の中にある不自然な段差がそれ。
路線バス編
吉田住宅前バス停
若菜が父の愛人の妙子と路線バスに乗るシーン。バス停の名称が「吉田住宅前」となっていますが現存しないバス停です。
映画「大阪物語」DVDより
バスの方向幕が「10 梅田」とありますが廃止された路線のようです。この路線は住道駅付近を走っていたようで3キロ以上南に位置する吉田住宅を通るのは明らかに不自然。おそらくこのバスは撮影用にチャーターしたもので本来は「臨時」または「貸切」と表示するものをバスに乗り込むシーンに限り既存路線の表示にしたと思われます。
中央大通高井田付近
バス車内シーン。車窓から高速道路の高架下なのを確認できます。
映画「大阪物語」DVDより
まず高速道路の高架下の道といってすぐ思いつくのは中央大通、バスが吉田から出発した事からも中央大通を走るのが自然。前方窓に道路を横切る高架橋がある事と右側窓に見えるビルの色と形からこの場所は高井田と判断しました。
内環状線
映画「大阪物語」DVDより
後述の画像からバスがこのあと天神橋8交差点を通る事が判明していたので何処かで北へ進んだ筈で、内環状線を走った可能性が高いと推理したらドンピシャ! この510の看板に間違いありませんね。
野江4交差点付近
映画「大阪物語」DVDより
このシーンではまず車窓の右側に赤いパチンコ屋の看板が見え、続いて反対車線の矢印標識が映ります。矢印の向きが普通の直進右左折と違う微妙な方向を差しているのでこれを手掛かりに野江4交差点と特定。
現在の写真なこんな感じですが、パチンコ屋が無い。それで、こんな時はgoogleストリートビューの過去画像。
矢印標識とパチンコ屋が同時に写ってます。
天神橋8交差点
映画「大阪物語」DVDより
バスが交差点を左折するシーン。ビルに「イモト」と書かれているのでネット検索で見つけられました。これによりバスが天神橋8交差点を東から進入して南に左折した事が判明。
天神橋6交差点
映画「大阪物語」DVDより
妙子が若菜に天神さんの事を説明するシーン。この画像よく見ると実際に「天神橋6」と「天神橋6東」の間で信号待ちしている場面だとわかります。進入禁止の標識が特徴的。画面で信号の後ろに見えるビルは任天堂。
わざわざこの場所でこのセリフを言わせているという事はたぶんバスを何度かまわして何テイクか撮影したと思われます。今回のマップの「バス走行ルート(推測)」にはそれを反映してプロットしました。
映画「大阪物語」DVDより
天神橋筋商店街のアーケードが今と違います。画像左にクレーンが写ってますが、ここが今の「大阪くらしの今昔館」のある場所です。
大阪南部エリア
なんばグランド花月
グランド花月の裏手と横面の階段付近。
映画「大阪物語」DVDより
グランド花月の正面側はかなり雰囲気が変わったけどこの辺りからの画像だとはあまり変わってないように見えますね。
阪堺恵美須町駅
映画「大阪物語」DVDより
阪堺の恵美須町駅は南に100mほど移動し、旧駅は取り壊し中でした。
フェスティバルゲート
今はなき都市型立体遊園地。確かこの映画「大阪物語」を当時この施設内にあった動物園前シネフェスタで鑑賞したと記憶してます。
映画「大阪物語」DVDより
今はパチンコマルハンの施設に建て替わっています。
通天閣の見えるビル屋上
両親が開業した「はる美&りゅう介の店 カップル」という店のビル屋上という設定。
映画「大阪物語」DVDより
3枚目の画像より、左から西日が差している事とりゅう介(沢田研二)の背中越しに見えるビルが「スカイコート恵美須」マネージャーの後ろのビルが「ビジタル浪速パート8」と思われる事から撮影場所は通天閣の南西、「新世界ロックビル」と推定。
黄色い壁のビルがそれ。航空写真などで屋上の形を見てもおそらくここの屋上で撮影されたと思われます。
もう一枚、通天閣右下に見えるビルが「スカイコート恵美須」、新世界ロックビルの右奥が「ビジタル浪速パート8」、このビルの屋上の形が独特で特定しやすかったです。
ちなみに映画画像2枚目で後ろに見えるビルがこれですね。
通天閣前
りゅう介がふらふらと自転車に乗るシーン。はじめに足元(タイヤ)あたりが映りますが、道路に交通表示が書かれているのがわかります。
映画「大阪物語」DVDより
特徴的な街灯、「止まれ」の標識、通天閣の脚の形などから、通天閣の北側「恵美須町東」交差点からの撮影とわかります。ちなみに画面の奥のほうに見える上が青く下が白い丸っこい物は「づぼらや」の提灯のようですね。
現在の様子。よく目を凝らしてみると手前の道路上に「30」の文字を消した痕跡が残っています。
黒門市場
映画「大阪物語」DVDより
ここも誰でもわかる場所なので貼らなくてもいいかなと思ったけどアーケードのポータルデザインが変わっていたので掲載。黒門市場の入口は何か所かあり今でも映画と同じデザインの入口も残っているのですが、入口左のペットショップが健在なのでここで間違いないと思います。
たこ焼き屋
ガード下のたこ焼き屋。こういうガード下の店といえば萩之茶屋あたりかなと思ったけど美章園でした。
映画「大阪物語」DVDより
なんとなく雰囲気が天王寺より南のほうのように感じたのと2枚目に映る向かいの店のシャッターが、何故か水道の蛇口が邪魔で下まで下せないようになっている事で判明。
今はてんぷら屋さんになっていました。
阪堺綾ノ町電停
映画「大阪物語」DVDより
この映画のロケ地は殆どが東大阪市と大阪市内なのですが唯一の堺市での撮影場所です。
現在の様子。柵の形などが変わっています。
口縄坂
映画「大阪物語」DVDより
天王寺七坂の一つ、大阪市内の観光名所です。
ー織田作之助文学碑ー
口縄坂の上には大阪を代表する作家・織田作之助の文学碑があります。また司馬遼太郎作「燃えよ剣」ではこの坂の北側(最後の写真の右手側)にあった西昭庵という料亭で新選組副長・土方歳三が恋人のお雪と最後の逢瀬をするシーンがあります。
新今宮駅付近
一瞬しか映らないからスルーしようかと思ったけど面白い写真が撮れたので掲載。
映画「大阪物語」DVDより
JR新今宮駅構内から撮影した現在の様子。映画で空き地っぽいところに星野リゾートの巨大ホテルを建設中です。
日本橋でんでんタウン
若菜がおっさんにナンパされる場面。街の雰囲気からでんでんタウン付近なのはわかるのですが、オタロードあたりかと思ってさがしていたのもあって場所を見つけるのに苦労しました。
映画「大阪物語」DVDより
地下鉄恵美須町駅1-B出入口のあるビル。
映画「大阪物語」DVDより
奥の工事現場の囲いは現在は愛染橋病院とマンションです。
雰囲気が全然違うのでなかなか場所を特定できなかったけどgoogleストリートビューの過去画像を見ると壁の電光看板の枠の色と形が同じなのがわかります。
トオルがおっさんをタコ殴りするシーン。
映画「大阪物語」DVDより
ここもだいぶ変わっていますが、先ほどの工事現場つながりで見つけられました。
つづく
につづく。